動物医療現場では、人の一般的な個人病院とは桁違いの確率で動物が亡くなっていきます。人では、人が亡くなる病院というのは限られていることに対して、動物では地域の個人病院で看取るケースも多いし、そしてご家庭でなくなることも多いですが、やはり動物の「死」を共有する機会は人よりも動物医療従事者のほうが日常的に体験する位置にあります。 ここで、動物医療関係者のペットロスについて考えてみました。 動物医療関係者は、つまり自分自身が、人よりも泣けないことに気がつきました。これは感じる感情が正しいとか正しくないとかではありませんが、昔からロスの体験を多くしてきた自分は、そのあとも日常に戻ることが可能なこと、そして自分の中で段階的に沸き起こる感情や体験が一過性なことを体験的に知っていますし、何よりも看取った数、様子を含め他の方より多い体験をしているという要因があると解釈しています。 しかし、それにしても、動物医療現場で他のスタッフが泣いているのに、自分だけ、涙が出そうになるくらいで終わってしまうというのが、なんとも物足りないというか、自分は人間として大丈夫だろうか?麻痺をしていないだろうか、という心配が湧いてきます。 そして、だからこそ、自分が客観的にスタッフの気持ち、感情を受け取れる存在であろうと改めて心に決めた次第です。 よく体験すること ①罪悪感:動物を死なせてしまった、助けられなかったことへの罪悪感 ②自分への怒り:助けられなかった自分の能力への憤りなど ③つじつまを合わせることで何か理由を考える:死亡の原因、責任の所在をみつけること これらが起きて、治まっていく感じがありますね。 心の中で起きていることは、押さえて納めておくほど現場は優しくなかったり、忙しかったり。また、その忙しさ、他の動物への貢献で自分のロスへの体験の埋め合わせをしたりしているように感じます。 思うんですが、もちろんその動物との体験したことを、沢山話してあげること、スタッフ同士でも話してみること、そして飼い主さんにも、沢山お話してあげましょう。 それから、だれかや何かのせいにするのではなく、(もちろんここをニュートラルに整理することが現場や治療能力の向上には必要なことです)、現象を整理すること。 現場スタッフは、自分の中にある悲しみや苦しみ、怒りを乗り越えて動物や飼い主さんに貢献し続ける仕事ですので、心のケアが本当に必要なんだと思います。 口蹄疫の殺処分で、出会ったばかりの豚さんたちが沢山亡くなっていくことについても、いわゆるペットロスと同様の反応が自分の中に起こる体験をしています。心に起きていることが現実化に大きな影響を表すといわれていますが、だからこそ私は動物医療関係者の心のケアは大切だと思います。 星になった動物たちへ、心からありがとう。 福井 利恵
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Author福井利恵 Archives
3月 2022
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