例えば、家族や大切な人、そして飼い主さんとちょっと嫌な感じになってきてしまったとき。実は、この関係性は、いつの瞬間からも、私たち自身から変えることが出来ます。 時間というのは連続しているようですが、いつの瞬間も、刹那刹那の連続です。 この瞬間から、新しい人生さえスタートして大丈夫なのです。 今日は、「動物と刹那」の体験談をお伝えします。 私がこのことを動物から体験させていただいたのは、ある「馬」からいただいた体験ですが、馬房で私が点滴をした時に、目を合わせたり、話しかけたりと、とても仲良くしていてくれた馬ですが、しばらく時間が経過して、洗い場で見かけたときに、目を合わせようとしても、全く目を合わせてくれない。というか、私など眼中にないようでした。 このことは、点滴する「その瞬間」は私をパートナーとして見ていたけれど、それから時間が経過して洗い場にいたときにはまた別のストーリーが始まっていて、過去のストーリーで体験した私という登場人物のことは(覚えていないかは本人に聴かないとわかりませんが)、次の瞬間の自分の世界に存在させないことも出来る。つまり、どの対象を自分の世界に取り入れるかは、馬の自由だということを確信したのです。 人間にも、同じことが言えます。正直にいうと、継続した関係性がなければ、その時さえ良ければすべてよし、という考え方もあります。これを応用すると、継続した関係性(家族や同僚、顧客、友人)に、会った「その時」に新しく接することが出来ます。 過去にうまくいかなかった関係でも、自分の「人物像」を新しくすれば、うまくいくようになるんですよね。もし相手が過去のことを覚えて気にしているのが心配でしたら、こういいましょう。「以前、あんな態度をとってしまって、申し訳なかったと思っているんです(過去の出来事を完了する)。もしよろしければ、またここから新しく関係性を創らせていただけると嬉しいのですが(今、この瞬間から新しいストーリーを始める)。」 こういってみると、不思議とすんなりいくものだったりします。 You can not change the other people and the past. But, You can change yourself and the future. ~他人と過去は変えられない、自分と未来は変えられる~ ウイリアム・グラッサー博士(Dr. William Glasser) そして、変えるのは、今、この瞬間から。
0 コメント
スタッフ教育の時、特に職人の現場ではいわゆるティーチングが行われていますよね。
最初からコーチングっていうことはないですよね。 使うべき知識があってこそ、仕事をさばく力を創って新しい可能性が開くのです。 私がコンサルティングをするときも、まずはティーチングをして、ある程度知識が整ってきたら、コーチングに切り替えるようにしています。必要と思われる新しい情報提供時は、随時ティーチングを行います。 ところで、 たいていの場合、部下の教育で仕事が出来るまでに上司がすることは、次の4段階と言われている。 1.教える 2.チェックを入れる 3.報告を受ける 4.手放す このどの段階でも、教育者に必要な技術がある。それは「聴く」技術です。 たとえば、1.の「教える」でわからないとき、「どうしてわからないんだ」とそれを責めたり、他の代案を言ってみたりしても、わからない理由を聞かないことには、実は解決できないケースが多い。そして「わからない理由」を伝えた時に、上司が聴いてくれなければ、部下は「この人に質問してもだめだ」と思うと、それ以降心を閉ざしてしまうので、ティーチングの効率が下がることになってしまう。真剣に、「どこがわからないか」を聴いて、「なぜわからないか」ではなく、「どうしたら理解できるか、出来るようになるか」を質問してみると良い。 2.のチェックを入れる時でも、どんなふうに仕事をしたか、「どこがわからなかったか」、「うまくいかなかった理由」を評価を入れずにただ聴くことが出来ると、新人も安心して話しやすい。 3.報告を聴く場合も、報告の内容が上司の想い通りにならないことがあるかもしれない。そしてその時に評価をして「これってこうしたほうがいいじゃない。どうしてそうしなかったの?」というやり取りになりがちだが、ここをただ聴いて聴いて聴ききってから、質問をしてみるのも一つの機能する方法です。 また、うまくいかなかったケースについて、「あなたが○○だったからうまくいかなかったんだよ」などと勝手に決めつけられるのも、良くないパターンです。さらに、「それで、これからどうするの?」と続いた場合は、本人は前向きに考えるどころか、自分を責めるしか選択肢がなくなってしまう。(表面で前向きそうにしていても、心の中で自分を責めていることが多く、トラウマになります) まずは、本人の報告を最後まで、だまって聴くように心がけてみることをお勧めします!! 4.ここまで進むと、教育者のほうも聴くことが出来ている状態になるでしょう。もちろん、責任は上司も持つ、それが上司の仕事です。 ここまでの話をまとめますと、ようは、仕事をする過程で、「ハートが開いているか」ということになるのです。 この「聴く」ということが機能している職場だと、人は自発的に仕事に取り組もうとするし、自分のやっていることからの学びをニュートラルに受け取りやすいのです。だから、人がのびのびと育つのです。 このことをお伝えするのは、これを知っていると知らない職場で、教育の効果に大きな差が出てしまっているからです。そして、取り入れられていない職場も大変多いのです。 上の教育の技術は、そのままクライアント教育にも言えることだと思いますが、いかがでしょう? このテーマは2008年ICCVM(世界獣医コミュニケーション会議)で大きく取り上げられたテーマの1つでした。「傾聴」の技術こそ、現場で大切だと。 「聴く」技術。 皆様の職場は、いかがですか? 今回、ご縁があって、海外にお住まいの方と会話をする機会があり、その時にぴんときていただいたようで、コーチングをご依頼いただきました。 その方はご自身がコーチをされていて、魂の成長という観点でとても深いコミュニケーションを理解されている方なのですが、なんと「犬が苦手」ということで、道を歩いていても、犬がいるのを遠くで見つけると、別ルートで遠回りをされるくらいの程度だということなんです。 そして、コーチングの会話は2度させていただきました。 一度目は、動物という存在についての会話、そしてどうしていくかはご本人が決めて、行動していただき、二度目の会話になりましたが、途中にいただいていたメールにも、家族とこのことを共有したり、公園で犬を触ったり、犬が好きな方の話を聴いたりなど、スピーディーに取り組まれていく様子をお伝えいただいておりました。 二度目の会話では、ご自身が犬が苦手であった理由に気づかれ、犬に触れるようになり、そして自分にとって犬の存在が何なのか、に気づき、これらの体験を今後の人生にどのように活かされていくか、世界のどの分野の人々にどう貢献されていくか、というところまでのコミットメントがありました。 苦手の克服、つまり「恐れの克服」が、「愛からの行動」に変容したのです。 これはブレイクスルーです。 たった二度の会話でここまで変化されることって、、、私もびっくりです。^^ 多くを学ばせていただきました。 ご感想をいただき、更に掲載の許可をいただきましたので、 ご紹介させていただきますね。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 福井利恵さま 今回は、私の心の中の大きな「怖れ」を「愛エネルギー」に変えていく旅を一緒にしてくださってありがとうございました!! お陰様で、ベストタイミングでエネルギーの大転換が起こったように思います。 私の大好きな「魂意識」に、動物の視点が入っていなかったところを気づかせていただき、利恵さんにはそこの大切な視点を入れ込んで、繋いでいただいた感じです。さすが、「動物と人間とのつなぎ役」の利恵さんですね!! 自分の周りの「調和の為に、魂として必要な事をしてくれている犬の存在」に気づいた時に、「愛おしさ」や「いてくれることへの感謝の気持ち」が溢れ出てきました。その愛おしさで世界を眺めてみると、調和や完璧さが見えてきました。この気づきが鍵だったように思えます。 今までずっと放置していた自分の中の「怖れ」を、こんなにも深く見つめる事ができ、これから前進していく際の大きな心の糧にさせていただきました。 抵抗→決断→祈り→慈悲→禊ぎを体験する中で、また新たな自分発見もありました。 絶妙なタイミングで利恵さんが私の所に現れて下さって、こんな素敵な機会を与えてくださったことに感謝の気持ちで一杯です。 本当にありがとうございました。 これからも、利恵さんのお持ちのエネルギーを「地球の調和を創造する」ことへと注がれていかれてくださいね。心から応援しています。 心からの感謝と愛を込めて ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ コーチングセッションをお受けいただいて、ありがとうございました!! 今後のご活躍を、お祈り申し上げます~!! 先日行った新代田のラーメン屋さん「麺通」のカウンターの上に、髪ゴム。
女性が髪を結んで思いっきりラーメンを食べられます! 使用後は戻して下さい。と書いてあります。 他に何て書けば良いですかね? 「持って帰らないでね。」 「次の方のために、返して下さいね。」 「返してくれて、ありがとうございます。」 「美味しかった?」これじゃ、持っていく時に変ですかね。 などなど、…ちょっとトレーニング。考えてみませんか。 今日も素敵な一日をお過ごし下さい。 行動すれば→結果が出る。まあ、これは当たり前なんですよ。そして、行動すれば、結果が起こるなということには嘘もなにもないんです。 ただ、行動するにも、どうにも望む結果が出ないときに、何があるのか。それは、多くの場合、自動車でいうと「アクセル」と「ブレーキ」を一緒に踏んでいる状況があります。 だから、この「ブレーキ」を外してあげれば良いのですが、いかんせん私たち子供のころから「評価」教育で「ブレーキ」を踏む癖を刷り込まれているもので、なかなか進もうとしない。この傾向は、年齢を重ねれば重ねるほど顕著になってきます。この状態を「保守的」とも呼びます。 ところで、このブレーキを外したら、どうなると思いますか? ・・・進むだけです。 この後は、ブレーキを外した人だけが知っている世界が始まるのです。 その世界では、「結果のセルフイメージ」が行動と結果をパワフルにつなげていきます。 体験談として、昔、お世話になった養豚農場でのストーリーをご紹介します。 これは、私がコーチングの勉強を始めた2006年、農場HACCPの指導で農場にお邪魔してスタッフのお話しを聴く機会があり、初めてコーチングを導入して傾聴をすることを始めた時のお話です。 「放牧養豚がやりたい」 右の写真は豚の分娩舎のしきりを取る試みを思い切ってしてみた一人のスタッフの英断の写真です。彼は放牧養豚がやりたくて、それをウインドウレス豚舎で具現化できないかと 自分で研究を重ねていました。「自分が将来やりたいのは、放牧養豚。でも、完璧にウインドウレス豚舎で、オールイン・オールアウトを徹底している農場でそれが可能なのか?」と、彼は悩んでいるのを打ち明けてくれました。ここで多くの獣医師は、反対するのか、「うーん、難しいんじゃないかなあ」というのがが普通だと思います。理由は、聞かないでください。そして、私はそうしませんでした。ただ、ひたすら聴いて、「へ~~~、そうなんだ。放牧養豚がやりたいんだ~~~、いいよね、放牧養豚。(だって本当に楽しそうに話すから)・・・じゃあ、やりたいんだったら、聞いてみたらいいんじゃない。社長に。」とはいったのを覚えています。(ブレーキはほかにも沢山ありましたが、徐々に外れていきました。本人が色々と行動を重ねていったからです) この「放牧養豚」プロジェクトが始まった時には、周囲の誰もが賛成していなかった、というかイメージ出来ない状態です。そして彼はある日、27室並ぶ分娩舎の仕切りを、全部取り払ったのです。(この当時分娩舎の仕切りを取って、離乳後の子豚にかかるストレスを少なくするという試みは流行したのですが、27部屋一緒にするというのは防疫上危険と考えるのが普通でした。今でもおそらくこれはチャレンジの部類です。) この後、この農場では、50頭ずつのロットで入っていた離乳舎のしきりも取ってしまって、1棟分、10部屋、つまり500頭の放牧状態になりました。 最初のうちは、心の広い社長さんも「病気大丈夫なの?」と心配していましたが、この後何が起こったかというと、子豚がみんな微笑んだのです。(月刊ピッグジャーナルの2010年1月号の表紙になっています) この農場にはもうお邪魔していないのですが、当時この写真を見て、社長が「ねえ、この豚笑ってるよねえ」と私に教えてくれました。豚が笑う。そんな感動を養豚場にもたらしてくれたのです。 もうひとつの願い・・・ 「病気から快復した豚を育ちが遅いからという理由で殺したくない」 それから、この農場では、虚弱で育ちが悪い子豚を淘汰せず、豚舎と豚舎の間の空き地に(小屋付)放牧することになりました。。。 この農場はSPF農場で、本来なら外に病気を持っているかもしれない豚が存在して良いわけがありませんが、なんと、社長がOKを出したのです。(養豚の獣医師としての視点でも、ある意味考えられない社長判断ですよ。)もちろん、「病気を出さない」という約束つきでしたが。別に問題は起きませんでしたし、休み時間にスタッフは、そこの豚が敷地内で好き勝手に遊んでいるのを眺めて癒されていました。時間はかかったようですが、ほとんどの豚が出荷されていきました。 「外で豚を飼いたい」というのも、私もタイミング良くお話しを聴かせていただいておりましたが、その時に、本人が「社長がだめといっても、でも、あきらめない。なんとか別の方法を考える」と言っていたので、また聴いて、「あ~、やるのね。うん、やっちゃってください」と言っただけでした。 最初に「自分は放牧養豚をやりたい」、と本人から聞いてから、3年くらいでその場に「放牧養豚」が実現していました!!素晴らしい。他にも、必然と偶然が交差する現象は沢山起きていたようですが、ここでは省略させていただきます。 イメージをしっかり持って、行動をすると、結果につながります。これは、一見無理と思えることこそチャレンジしてみると、不思議な起こり方を体験することが出来るものです。 この時に、行動する人が誰かにそのことを話してイメージをより明確に脳にインプットしていく過程があるのですが、ここにコーチングのセンスがある人に聴いてもらうと、大変パワフルです。日常会話と全く次元の違う前進が起こりますので、コーチング体験をお勧めしています。 それにしても、この話懐かしいです。 この農場と豚さんたちには、沢山の感動をいただき、 本当に今でも感謝をしています。 もう行かなくなって何年も経過しています。 命を更に大切にする農場になっていることを願います^^ 今日は、ちょうど昨晩の経営者セミナーでお聴きしたホットなご意見をご紹介します。 「その先生は、いい人なのはわかる、アメリカの大学を出たすごい優秀な方なのもわかる。動物のために一生懸命なのも、悪気もないのも本当にわかる。・・・でも、説明が全然わからないんです。」 この方は猫ちゃんを飼われていて、耳血腫で手術をすることになった時の説明を、院長の説明と若い女性の説明をそれぞれ受けたそうなんですが、最初に聴いた院長の説明は難しい言葉の乱立でさっぱり理解が出来なかったそうです。これが後の若い女性の獣医師の説明では、もっと分かったというのです。これは男性と女性、院長とスタッフ、年齢の差等、も要因で、運が悪かったという部分もありますが、残念ながら、動物病院へ行かれた方から、このようなご意見は沢山いただいています。 では、このことに対して現場で出来る配慮を考えてみましょう。 〈医療用語はなるべく使わない〉 飼い主さんが?になっている言葉は例えば次のようなものです。 FNA(エフエヌエイ?エフエム??)、セイケン、セイカガク、ニョウなど ・・・普段使っていない言葉は、まず「音(おと)」で聞いてから認識するので、すぐにイメージとつながらないと、思考停止が起こってしまい、そこから先の話についてこられなくなります。 だいたい、動物医療関係者以外だと、「耳血腫」という言葉すら「ジケッシュ??」とはてなマークですよね。 〈飼い主さんはただで混乱している〉 おそらく、麻酔の話とか色々されたんだと思います。さらに飼い主さんは自分の猫ちゃんのことが心配で、言葉が頭に入りづらいというのもあったと思います。頭の中が混乱した状態で物事を判断する能力は、3歳児程度とも言われています。この状態で難しい言葉を理解するのは、それこそ困難なのかもしれませんが、私たち本当によくやってしまっていがちなのです。 動物病院には健康な動物で検診に来る以外は、飼い主さんは自分の動物に何かあったらどうしよう、という不安を抱えて来院しています。つまり動物病院では、ただでさえコミュニケーションがとりにくい状態なのです。だからこそ、わかりやすい言葉を使うことが大切です。 ちなみに、飼い主さんの耳血腫の説明は、こうでした。 「耳が張れてこ~~んなに(ジェスチャー)なって、もうパンパンになって、どうしようもなくなっちゃって手術しなくちゃいけなくなったんです!!」 ・・・いかがでしょうか、わかりやすいですよね。 相手に伝わりやすい言葉にしてあげるのも、そのために相手が使う言葉を使うことも、動物病院で配慮いただくと嬉しいです。 せっかく大切な家族を治してもらいに来て、その対価も支払うのに、 病院の先生にお礼を「ありがとうございます」って言いつつ、帰りにこう思っている方多いみたいです(これは本当に良く聞きます)。 「今日も先生が何を話してるんだか、良くわからなかった、・・・ま、仕方ないか。そういうもんか」 今日の臨床現場にお役立ていただけますと幸いです。 共生は共に生きると書く。
ここで言う共に生きるとはどういう意味なのだろうか。 私の人生は私たち自身が主人公である。 つまり自分らしく生きることこそが、生きるということである。 ここで共に生きると考えるとき、私たちは周囲の人たちにどんなことができるか考えてみよう。 獣医師の視点から見てみると、それぞれの人や動物が「自分らしく生きること」が大切である。 それには私たちは、自分の人生を自分らしく生きて、一他の人が自分の人生を生きやすくするようにしてあげるのが最善である。 だから現状生きにくくしている部分をどんどん改善して行くようにするとコミニケーションも非常にスムーズになる。 するとお互いにやりたいことが叶い易くなるので、お互い人間関係がスムーズになり、結果として私達自身の人生も生きやすくなる。 すべての人が自分らしく生きる、それが健全な状態である。 それをするために今自分に何ができるかを考えてみよう。 人の役にたつには、まず自分が健全な状態かということが非常に大切なことだ。そこがスタートラインだ。 共生のための一つ目の質問はこんな感じでいかがでしょうか? 「あなたは自分自身の人生を生きていますか?」 お読みいただきありがとうございました。 素敵な一日をお過ごしください。 診療室で飼い主さんの話を聴いているとき、いったい何が起こっていると思いますか? 多くの場合私たち獣医師は、飼い主との医療面接中に、思考、感情、五感やイメージなど、いろいろなことが起こっています。 更に獣医師は、相手の話を聴きながら、自分に自然に起きてくる感情やイメージなどを横において、相手の望みを叶えるコミュニケーションをとっていく必要があります。それはまさに、スーパーコンピューターのよう。 同様のことが、飼い主さんサイドでも起こっています。望みを獣医師に伝え、伝えやすいか伝えにくいか、この人に話しても良いか、を一瞬一瞬のコミュニケーションで評価しつつ、自分の心配事から発生するであろう最善から最悪までのシュミレーションやそれに伴う感情が湧いているのです。 実は、ちょっとしたことの連続でコミュニケーションは成り立っています。いくら自分が優秀で、人柄が良い獣医師であるという評価を周囲から得ているからといって、例えば余裕がないときに、いつも同じ最善の状態でコミュニケーションをすることが出来る人というのは、正直少ない、いやいないと思います。 自分のコミュニケーション能力が長けていて、今まで飼い主とのコミュニケーションで全く問題のなかった方はほとんどいないでしょう。もしあなたがそうだとしたら、それは全く運が良かっただけかもしれません。怖い思いをされた方がほとんどだと思います。 この時、獣医師が自分のほうに湧いてきた感情が表情や態度に無意識に現れたら、その瞬間飼い主は自分の言いたいことを言いづらくなるでしょう。このフラストレーションが溜まって、人間関係がギスギスしていきます。人間関係を保っているのは相手の理性と、自分の動物を大切にしてほしいという願いからですが、しばらくして病院をだまって変えるケースがこれに当たるでしょう。 これは「サイレントクレーマー」です。 飼い主は、残念ながら、フィードバックをめったにくれません。 黙って病院を去ることがほとんどです。 だから、私たちはいつも恐怖と戦っています。 無言で去られるのを怖いと思い、でもそれを引き起こした自分を見たくないので、見ないふりをしたりします。 私はこのことこそ、とんでもないエネルギーの浪費だと考えています。 人間の医師と患者のコミュニケーションの講演で医師の日野原先生は、患者へ向かって「良い患者になるために、病院を不本意に去ったら、その後どうなったのかを一筆書いて送ってあげなさい。そうすれば、患者であるあなたも医師もその後どうなったのか、というもやもやした気持ちがすっきりするから。」と仰っていました。人間の医療でもなかなかそれをする人はまだそんなにいないと思います。もちろん動物病院にもこのことはそのまま当てはまります。これが出来る関係になったら素敵ですね。 飼い主の心配事を解消するには、飼い主の訴えたいことをしっかり聴けているか、をあえて顧みる必要がありそうです。そのためには、診察室のコミュニケーションの練習をするのが即役に立つでしょう。 皆様の病院内でも、コミュニケーションセミナーを開いてみたり、スタッフ同士でシュミレーションをしてみてはいかがでしょうか?失敗して良い安心な場で。 |
Author福井利恵 Archives
3月 2022
Categories
すべて
|